社会人と発達障害
こんな記事を見かけました。最近よく取り沙汰される”発達障害”。最近は子供の発達障害についての情報も多く、見かける機会の多い言葉です。
身近に発達障害を持つ人が何人かおり、ついついこういう記事が目に入ってきます。そこで、私なりに今までの経験上こうではないかというのを書いてみます。
現在の発達障害に対する社会的対応
子供の発達障害については、さまざまな情報が出てきており、専門とする医療機関も増えてきています。しかし大人を対象とした発達障害については、まだまだ模索状態なところがありますよね。社会人になってからの支援や養育のようなものは難しい部分が多いと思います。
子供の発達障害の場合、各市の保健センターによる発達検査で見つけることができ、そこから心療内科などで詳しく検査・療育を受けられるベースがだいぶ増えています。それでもまだ不安の残ることが多いのに、大人となるとさらにまだまだ発展途上です。
大人になってから発達障害の診断を受ける場合、まずどの心療内科に行っても良いわけではないのです。各病院のHPを見て診療対象に発達障害と書かれていたとしても、18歳以下の子供のみを対象にしていたり、最近多いからと名前だけで専門知識を持たないところもあったりします。
そして診断を受けたところで、大人となると困りごとは仕事に多く出てくる。そこを改善していくことは、まだまだ子供の発達障害に比べて支援の内容が少ない部分です。
最近では、就労移行支援を行う福祉サービスなども増えています。しかしそこを利用するとしても、日本の企業の体質や仕事内容によって、どの企業でも一般枠と同じにできるわけでもない。そしてまだまだ発達障害に対する理解がされていないという現実もあります。
さらに言うと、得意不得意がはっきりと分かれていることに加え、よく言う発達障害の人は何か一つ飛び抜けて得意というのには、皆が皆そうではなく、限界があると言うことです。
何かにこだわりを持って、ただひたすらに突き詰められたり、発想が豊かでクリエイティブなタイプの人がいるのと同様に、0から1を作り出すのが苦手で、集中力もなく突き詰めるのが苦手なタイプもいる。それに加え、体を動かすのが苦手な場合は動けばできる仕事も難しくなってきます。そこにコミュニケーションがぎこちないのが加わると、理解のある同僚や上司のいる職場でなければ、どんなに一生懸命やっていても誤解を受け、少しの工夫も実践しにくい環境となる可能性が高いのです。
どうすればいいのか
こればかりは、必要性を感じる人が増え、知ってもらう機会が増えていくことを願うしかないです。しかし、既に仕事をしている当事者や、発達障害だと思われる人がいる会社にとっては、どうすれば業務をうまく回せるようになるのかという鬼気迫ったものがある。
ここでは、上記記事同様”上司の立場”での見るべきかなと思うところを書いていこうと思います。
まず、どんなタイプであれ共通する必要な心がけが以下の3つです
- 目的・目標をはっきりさせる
- こまめに現状を共有
- 感情的に失敗を注意しない
発達障害当事者は、目的や目標を把握しにくい性質が多く、見失ってぐだぐだな結果になってしまいがちです。そのため細かく目標を設定し、こまめに現状を共有できる環境が必要です。
こまめに確認するのは無駄と思いがちですが、後でやり直しが増えることを考えると、この方が効率的。
そして、感情的な注意や叱責は何の利益も生まないということです。言っていることやその正当性よりも、その時どんな感情をぶつけられたかが頭に残りやすく、そちらに意識が行ってしまいやすいのです。失敗の本質的な原因や考え方の改善につながらず、ただ否定されたという自信喪失になり、失敗が増え、下手すると何も手につかなくなってしまう人もいます。
この3つを基本とし、どうするのが効果的なのか、何だったらできるのかを見極め、その人ごとに工夫をしていく必要があります。
どんなタイプがあるのか
発達障害は、大まかに以下の3つに分類されます
- ASD(自閉症スペクトラム障害)
- ADHD(注意欠陥・多動性障害)
- LD(学習障害)
ASDは、少し前までアスペルガーと言われていましたが、その名称は現在診断名としては無く、自閉症スペクトラムの中に位置するものとなっています。知的な障害はなく、コミュニケーションのぎこちなさや強いこだわりが特徴です。
真面目で理性的に考えることが得意なので、ハッキリと的確な説明や指示は理解しやすく、きちんと納得すれば真面目にしっかりとこなすのが得意です。失敗を指摘するよりも、こうだったからうまくいかなかったという理由と、こうすればうまくいくという正解を示すことが重要です。
こだわりが一致すれば、ものすごい集中力を発揮することがあります。
ADHDは、不注意や衝動性が特徴です。他に気になるものができると、大事な予定をすっかり忘れたり、慎重にやっているようでも失敗が多い。優先順位を意識するのが苦手で、一つの事に集中することができず、何個も同時にはじめてしまい、どれも終わらせられないといったことが起こります。また、多動は言行にも出やすく、思ったことを言わずにいられなかったり、カッとなったときに歯止めがきかず言葉や行動に出やすい面があります。言行には表れなくても、脳内が多動の場合があり、いろんな事が頭をめぐるため集中するのが苦手な人もいます。
クリエイティブな面を持つ人が多く、多方面に興味を持ちやすいです、興味を持ったことにはすごい集中力を発揮します。
LDは、話すことは出来ても文字を書いたり読んだり、数字を扱といったことが、できるように見えるのにピンポイントでできなかったりします。何が苦手かは人によって様々です。
大体は、この3つのどれかに分類されるというよりは、2つ以上をあわせ持った状態で、どれかが特に強く出ているという場合がほとんどです。ここに関してはASDが強くでていて、ここに関してはADHDが強く影響しているなというように、場面によって特性を意識してみるとわかりやすいかと思います。
この大まかな3つのタイプに加え、情報の処理方法にも得意不得意があります。
- 聴覚での情報処理
- 視覚での情報処理
聴覚での情報処理が得意な人は、耳で聞いたことを覚えておくのが得意です。どんなにわかりやすく書類や図などでまとめたものを見せても、そこから必要な情報を得るのが苦手なため、見せながら言葉で説明するほうが理解度が高いです。たとえば、簡潔に箇条書きでまとめたものも、上から順に読むだろうしこれなら分かりやすい、と考えるのは早計です。目についたフレーズや漢字、色などに意識を取られ、理解するのに相当の労力が必要になるかもしれないからです。この場合はわかりやすく色を付けようなどというのは逆効果で、白黒の文書にし、大事な部分は言葉で説明することが重要です。
視覚での情報処理が得意な人は、逆に耳で聞いたことは頭に残りにくい性質があるので、口頭での指示や説明はわかっているようでわかっていないことが多いです。そのため、簡潔に図やフレーズなどで見える化し、常に目で確認できるようにすることが重要です。
家庭での例でいうと、何度注意しても床にモノを置きっぱなしにする癖が治らず困っている場合、置いてはいけないところに大きな字で「ここには物はおかない!」と書いておき、置いてほしいところに「○○置き場」と書いておくと、改善するという具合です。
仕事においても、やってほしいこととやってほしくないこと、やり方などを”それくらい考えればわかるでしょ”と本人任せにすると、いつまで経っても思うようにいかないです。パターンを細分化し、どういう考え方でこの選択をする必要があるのかを簡潔に明記し、共有することで理解が深まります。
当たり前のことを書いてしまいましたが
これは発達障害にかかわらず、誰にでもあてはまる問題でもあります。ただそれが強く出ていて、苦手な分野はどんなに努力しても解決できない、業務を行うに際してこちらで思っているやり方では支障をきたすほどであるだけなのです。
そして、人は皆Aさん、A’さん、A’’さんなのではなく、Aさん、Bさん、Cさんです。別の人格を持ち、別の常識のもと、考え方のベースがみな違うということです。いろいろな人がいるのに、言わなくてもわかるだろう、こうしておけば全員わかるだろうということは無いのだと思います。
それぞれに合った働き方があり、それぞれに合った情報の処理方法があります。一つの目標に向かって、経路の多様化がもう少し柔軟な社会となれたらなと思います。